妊娠中の女性がむくみやすいのは、ホルモンの影響です。妊娠中期から後期にかけてが、特にむくみやすい時期です。

北澤正文先生
北澤正文先生
とちぎメディカルセンターしもつが 病院長

女性はどうしてむくみやすいの?

むくみとは、体内に水分が溜まって腫(は)れてしまう状態です。痛みをともなわず、指で押すと容易に跡がつきます。初経から閉経までの多くの女性は、常にむくみやすい状態にあるといっても過言ではありません。正常な排卵を有する女性では、排卵後に妊娠に備え黄体(おうたい)ホルモンが分泌(ぶんぴつ)されます。この黄体(おうたい)ホルモンが腎臓の腎細尿管(じんさいにょうかん)に作用し、水と電解質の排泄(はいせつ)を促進するのですが、別のホルモンの働きで結果的に体内に水分貯留(ちょりゅう)を引き起こしてしまうのです。ですから、女性は排卵後から月経開始の間にむくみやすくなるのです。黄体(おうたい)ホルモンは妊娠維持にとても重要なホルモンで、妊娠が成立するとさらに分泌(ぶんぴつ)が増加し、むくみやすい環境が高まります。 妊娠中はどの時期でもむくみが生じやすくなります。循環血液量が増加する妊娠中期から後期にかけてが、特にむくみやすい時期といえるでしょう。血液は、赤ちゃんの栄養を胎盤(たいばん)を通して運ぶ大切な役割を持っています。妊娠30週以降になると循環血液量が30〜40%増加するため、血液が薄まった状態になり、その血液から体液がもれると皮下組織に水分として溜まり、むくみとなります。軽度のむくみは妊娠性の変化のひとつで、健康な妊婦の約80%に起こります。ただし、全身がひどくむくむ場合は別で、妊娠高血圧症候群の症状だと考えます。

簡単にできるむくみ解消法

妊娠中のむくみ解消法は、寝るときに足を少し高くすることと、十分な睡眠時間を取ることです。他には、リンパマッサージ、弾性ストッキング、ウォーキング、足浴なども効果が期待できます。食事面では、カリウム、ビタミンB1やカルシウムの不足がむくみの原因になります。ナトリウム(塩分)が過剰に残っていると水分はからだに留まりますが、カリウムは余分なナトリウムを尿として排泄(はいせつ)してくれます。カリウムはバナナなどの果物に多く含まれています。

むくみ解消に利尿剤(りにょうざい)は、よほどのことがない限り使用しません。杜仲茶(とちゅうちゃ)、はと麦茶、黒豆茶など、利尿(りにょう)作用のある飲み物を摂(と)ることは、摂(と)り過ぎでなければ問題ありません。