妊婦さんの約10%が糖代謝異常です。 糖代謝異常と診断されたら医師と相談し、血糖管理を行います。

平松祐司先生
平松祐司先生
岡山市立市民病院 産婦人科 診療顧問 / 岡山大学名誉教授

糖質代謝異常には、食事療法が大切です

妊婦さんの約10%に何らかの糖代謝異常がみつかります。妊娠中の糖代謝異常には、①妊娠糖尿病、②妊娠中の明らかな糖尿病、③糖尿病合併妊娠の3つがあります。妊娠前から糖尿病のある人は、糖尿病内科の先生と相談の上、十分な血糖管理をして計画妊娠することが児の奇形予防のために重要です。

その他の妊婦さんは、妊娠初期と中期の2回スクリーニングを受け、陽性の時は75gブドウ糖負荷試験をし、正常か、妊娠糖尿病、妊娠中の明らかな糖尿病のどれであるかを診断してもらいます。何らかの糖代謝異常の診断がついた場合は、定期的に超音波検査で胎児発育、羊水量などに注意しながら健診していきます。血糖管理が重要で、早朝空腹時≦95mg/dl、食前≦100mg/dl、食後2時間≦120mg/dlを目標に管理します。

まず大切なのが、食事療法で、母児ともに健康に妊娠を維持でき、食後高血糖や空腹時のケトン体発生を亢進させない至適カロリーを設定してもらいます。高血糖を予防し、血糖の変動を少なくするために分割食にすることがあります。具体的方法は、医師や栄養士さんが指導を受けましょう。妊娠中の運動療法には限界がありますので、その時の妊娠状態に応じて、どれほどの運動をすればよいか指導を受けましょう。食事・運動療法だけで血糖管理が困難な場合は、インスリンを使用します。分娩の時期、方法については、その時の血糖管理の状態、赤ちゃんの大きさなどを踏まえ、医師と相談し決めましょう。

妊娠糖尿病、妊娠中の明らかな糖尿病と診断されていた人は、産後6~12週で再度75gブドウ糖負荷試験をうけ、正常型、境界型、糖尿病型のいずれであるか診断してもらいます。境界型、糖尿病型の人は、糖尿病内科で引き続きフォローアップや治療が必要となります。産後の検査で正常型と判断された人も、将来、母児ともに糖尿病、肥満、メタボリック症候群などの発症頻度が増加することが知られているため、出産後の母児の健康管理は重要であり、母乳栄養は母児のこれらの疾患予防に有用であることも知られています。

日本糖尿病・妊娠学会のQ&Aに多くの情報が掲載されていますので参考にしてください。

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